少子高齢化・核家族化を背景に、最近増えてきている「家族葬」ですが、具体的にはどのような葬儀のことか知らない人も多いのではないでしょうか。
家族葬という名前の通り、家族や家族同様の近しいもののみで行う葬儀、と定義されているわけでもありません。
急な葬儀になったときに慌てないためにも、家族葬とは、一般葬・密葬との違いや、家族葬のメリット・デメリットを確認しておきましょう。
家族葬とは?詳しく解説
家族葬とは、家族や親族、ごく親しい友人などの少人数で行う葬儀のことです。
ですが、何親等以内など、普通は何名までと、決まっているわけではなく、家族のみで行う場合もあれば、家族同様だった方々、近しい親族など、参列者は様々です。
限られた人数で行う点では「密葬」と同じですが、厳密には、後に一般参列者を招いた本葬を行う予定がある葬儀のことを密葬といいます。
近親者のみので行うため、大勢の参列者を招く一般葬よりも費用を抑えることができ、参列者への応対もありません。
そのため、遺族のみでゆっくりとお別れする時間を過ごすことができ、時間や内容などの自由度も高いことから、最近ではよく選ばれているご葬儀の形です。
家族葬と一般葬の違いとは
一般葬は、近親者だけではなく、勤務先の仲間や故人の縁者、近隣住民などにも参列いただくひと昔前主流だった葬儀の形のことをいいますが、家族葬との大きな違いは、参列者人数と規模の大きさです。
家族葬が、多くて30名程度までの小規模な葬儀なのに対し、一般葬では、50~150名程度の参列者となります。
その分大きな会場を選ばなくてはならず、飲食費用や送迎用のマイクロバスを借りるなどが増えることから、一般葬の方が葬儀費用がかかることになります。
家族葬が増えて来た理由
公正取引委員会が2017年に発表した「葬儀の取引に関する実態調査報告書」※1によると、葬儀の種類別の年間取扱件数は、「一般葬」が63.0%で最多となり、これに「家族葬」が28.4%で続いています。また、年間売上高をみると、トップは「一般葬」で76.2%、次点の「家族葬」は19.2%となりました。いずれも、一般葬のシェアが高いことになります。
【葬儀の種類別年間取扱件数(%)】
【葬儀の種類別年間売上高(%)】
一方、回答した葬儀事業者等が「増加傾向にある」とした葬儀は、扱い件数も売上高ともに、「家族葬」が5割超えでトップになりました。
これに「直葬」(扱い26.2%/売上23.1%)が続き、「一般葬」は扱い件数で5.4%、売上高で7.5%に留まっています。
さらに回答業者が「減少している」と答えた葬儀は、「一般葬」が扱い・売上ともに7割弱でトップ。このデータからみても、大人数の一般葬は減少傾向にあり、小規模・簡略化の家族葬や直葬が増えていることがわかります。
出典:公正取引委員会「葬儀の取引に関する実態調査報告書」平成29年3月
家族葬の一般的な流れ
家族葬を行う流れは、一般葬と変わりありません。近親者のみで行うので、外部からの参列者に対する気遣いなどもなく、時間や儀礼にとらわれずに進めることができます。
ご臨終 | ●死亡の連絡 ●医師から死亡診断書を受け取る、退院手続き ●葬儀社等へ遺体搬送依頼 |
---|---|
ご遺体搬送・安置 | ●自宅や葬儀場などへ搬送。安置 ●死亡届の提出 |
葬儀社打ち合わせ | ●葬儀日程の調整 ●葬儀プランの打ち合わせ ●葬儀に筆媼遺影や喪服などの準備 ●葬儀費用、お布施等の準備 ●通夜・告別式日程の連絡 ●納棺 |
通夜 | ●受付~読経~弔電披露~喪主挨拶~お焼香 ●通夜のふるまい |
葬儀・告別式 | ●受付~読経~お焼香~別れ花の儀式 ●出棺~火葬場へ移動 |
火葬 | ●火葬~お骨上げ、納骨~繰り上げ法要など |
家族葬のメリット・デメリットとは?
最近の核家族化の傾向としても、メリットの方が多いと思われる家族葬ですが、デメリットや注意すべきこともあります。
家族葬のメリットとは
- 少人数・小規模の場合が多く、葬儀費用を抑えることができる
- 近親者だけで、ゆっくりと故人を偲ぶ時間を過ごすことができる
- 葬儀内容を比較的自由に決められる
- 葬儀の準備時間や手間を減らすことができる
- 参列者がいないので気遣いが無くて済む
- 近親者のみなので、故人好みの演出を行うこともできる
などが挙げられます。
本当に身近な、親族や友人のみで行うため、一般的な体裁や、参列者への気遣いなどが不要になるので、精神面では大分楽に執り行うことが出来ます。
家族葬のデメリットとは?
- 葬儀後の自宅などへの弔問客が多くなる可能性がある
- 周囲の理解が得られない、不満を言われる場合もある
- 香典収入を見込めない
などとなります。
家族葬を執り行う場合は、その後のことを考え、一報は入れておく、他の親族や親しくしていた方々への配慮も怠らないことも大切です。
家族葬を行う時の注意点
家族葬にすると、葬儀後に弔問客が来て、その対応に追われることも多いと聞きます。
そのためにも、家族葬を選ぶ際に注意するポイントは、
- 参列者は誰を呼ぶか、訃報をどの範囲まで知らせるか、香典・供物は受け取るかなどを決めておく
- 訃報を知った参列希望者にお渡しする、お断りの文章を用意する
- 事後の弔問者が多くなりそうなら、お別れ会をする、四十九日法要に参列いただくなどの対応を考えておく
などの準備もしておきましょう。
まとめ
家族葬は最近人気のスタイルであるとはいえ、故人と親交のあった友人・知人が多い場合は、葬儀後にその対応に追われることも少なくありません。
故人を偲んで来てくださる方の気持ちを汲んだ葬儀後の対応も、事前に考えておく必要があります。
後悔しない家族葬を行うためにも、ぜひ参考にしてください。